ジュエリーボックスの中のあたし

「なわけないじゃん!」


あたしがいくら否定してもユキは聞く耳もたず。


ユキは青い瞳パワーをフル活用しあたしをまじまじと観察した。



そうしてだんだんしどろもどろになっていくあたしを見て、ますますニヤッと笑った。


「ミリかーわいっ。」


ユキはそう言うと、まるでテディベアでも抱きしめるかのようにあたしをギュッとした。


「違うってば!」


往生際悪く否定し続けるあたしだけども、とりあえずめんどくさいと突き放されなかった事に内心ではホッとしていた。


しかし優しい顔して今ユキの心の中では、着実にめんどくさいバロメーターが上がったんじゃないかと恐れているのもほんと。


何故こんなことを思ってしまうのか。


それはあたし自身お店に来るお客さんをこうやってジャッジしているから。


あたしの心の中のめんどくさいバロメーターや、金遣いがケチだバロメーターがある一定基準値を超えると、そのお客さんの相手をする事をやめるのがあたしの常だから。


こんな自分を時々むなしく思う。ユキのあたしへの思いは、どうかビジネスのように厳しいものではありませんようにと願わずにはいられない


。「じゃあまっすぐこっちに来ればよかったのに。」


「だって橘さんにユキのマンションを教えるわくにはいかないでしょ?」

「橘がミリを家まで送ったの?」


さっきまでのニコニコした表情とは打って変わって、あたしを抱きしめる腕を緩めたユキは、急に不機嫌な表情になった。