ジュエリーボックスの中のあたし

「ほんとにないの?」


ユキはあたしの横にしゃがみ込んだ。


「ない。あたしのマンションのエントランスで落としたんだ。きっと。」


「ん?一回自分のマンション行ったのに俺んとこ来たの?」



…やってしまった。墓穴ほった。


こんなのユキに会いたくて、わざわざ戻ってきましたと告白しているようなものじゃない。


ユキにはめんどくさい女だと思われたくない。


たぶんユキは、あたしが来たり来なかったりのこの距離感が心地いいと感じている。


あたしがユキにべったりになりなんかしたら、ユキはすぐ様あたしをうっとうしく思い、次の女の子を探し出すに決まってる。


「だって明日着る服こっちにあったし。」


精一杯平静を装ってみたものの、こんな言い訳ユキに通じるはずがない。

案の定、ユキはすべてお見通しと言わんばかりにニヤッと笑った。


「俺に会いたくてわざわざ戻ってきたんだ。」