ジュエリーボックスの中のあたし

しかしその日以降、橘さんは週に何度も店に足を運ぶようになった。


今までの温和な彼はどこへやら、今の橘さんときたらミザリーのごとくすっかり人が変わってしまったようだった。


ヘルプの子たちもだんだんと橘さんの席につくのを嫌がりはじめたし、橘さんは橘さんであたしと２人きりで席につくことを望み始めた。


ママはその願いをすぐさま汲み取り、あたしと橘さんは２人きりでお酒を交わすようになっていった。


この事であたしはお店の子たちに余計な心配をかけさせてしまった。


超がつく程マイペースな愛香ちゃんまでもが、おかしくなった橘さんと２人きりで席につくあたしを心配している様だった。


そしてこのことがなんとも不運なことに、ユキの機嫌を損ねる原因になった。


「またあいつの臭いがする。」


最近はあたしが帰るなりこう言い始めるユキ。


あたしがお風呂に入り、臭いをおとすまで仏頂面のままだった。


橘さんとユキ。


この２人に悩まされ今のあたしはまさに"てんてこ舞い"。この言葉がピッタリだった。