次の日も橘さんはやってきた。


2日連続で(その上前の日にはあたしとアフターをしているのに)来るなんて珍しいなと思いながらも席に案内した。


橘さんは昨日よりもさらに顔色が悪く疲れているように見えた。


座り込むなり橘さんはあたしの肩を掴み込んだ。

突然のことにビクリとしたけれども、そんなあたしをよそに彼はとても真剣な眼差しで


「昨日はあれからどうしたんだ?」


などと言ってきた。


「部屋に帰ってすぐに眠ってしまいました。ウフフ。夢に橘さんが出てきたんです。」


何故それほど切羽詰まった表情なのか見当もつかないあたしは、取りあえず笑顔でいつもの営業トークに持ち込もうとした。


「自分の部屋にかい?」

いつも喜んでくれるあたしの言葉には耳も貸さず、彼はさらにあたしに追求した。


「ええ。もちろん。」


昨日は橘さんにあたしのマンションの前まで送ってもらったのだ。


もちろんあの後ユキのマンションに帰りましたなんて口が裂けても言えない。


「ハァ。」


橘さんは小さくため息をつきそのままふさぎ込んでしまった。


「橘さーん。今日も来てくださったんですねー。」


ヘルプの愛香ちゃんたちがやってきても橘さんは曖昧に微笑んだだけだった。


あたしは、最近仕事が上手くいかないだとか、奥さんと離婚することになりそうだとぼやいていた橘さんを思い出し、それで少々気が滅入ってるのかしらと、このときは彼の言動の真意を深く考えはしなかった。