「じゃあミリはそれから幸せだったんだ。」


「うん。」


「そっか。」


彼はホッとしたように安堵の息を漏らすとそれから一言も話さなかった。

「あたしが幸せなのが嬉しいの?」


あたしは会話を続けたくて、質問した。


けれども、その後の答えは聞けずじまいだった。

スースーと規則正しい寝息とともに彼はいっそうあたしを強く抱き寄せた。


どこにも行かないで。とでも言うように。


ベッドの中で今思うことはただ一つ。


あたしはユキに恋をしました。


…いや。恋をしていたことに気づいたといったほうが正しい。


青い目をした不思議な魅力を持つユキ。まったく掴みどころがないユキ。あたしを誘拐しておいて悪びれのないどこまでもマイペースなユキ。喜ぶときは少年みたいにかわいいユキ。


いろんな表情をもつユキ。あたしはそのすべてを愛しく感じる。


全部思い返しても胸が切なくなる。


けれどもふとした時にみせる悲しい表情の訳をあたしは知りたい。


そしてそれが少しでも癒されるのなら、少しでも楽になれるものなのなら、そうしてあげる女は他の誰でもない、あたしでありたい。


そう願わずにはいられないの。


その夜あたしはこれ以上くっつく隙間なんてないのに、よりいっそうユキに寄り添いきつく抱きしめた。



そうしてやがて眠りについた。