「ユキみたいのがどうやって社をまとめてるの?」


冗談めかして聞いてみた。


「俺はなんもしてないよ。社長代理に全部まかせてあるんだ。俺はデザインばっかしてる。」


寂しそうに見えたのはほんの一瞬で、月に雲が隠された時にはもう、いつもの顔に戻っていた。


「ふーん。」


「俺の話はいいじゃん。ミリの話聞きたいな。」

「あたしの話?」


「うん。捨てられてからはどうしてたの?」


少し聞きづらそうなニュアンスを声に含みながらユキは尋ねた。


ただここからのあたしの人生は話せない程そう酷いものではないのだ。


「孤児院。」


あたしはポツリと言った。


元々自分の話をするのは得意ではない。


それでもユキがまた謝ろうとしているように感じられて、慌てて言葉を繋げた。


「でも暗い感じは全然ないの。あたしを引き取ってくれた施設のおじさんは本当に優しい人だったし。両親といた時よりも幸せだったわ。それに施設には他にも子供たちがいたから妹も弟も出来た。すごく暖かかった。」