「…もっと興奮しないの?女の子は普通みんな喜ぶんだけどな。」


やっぱりいっぱい女の子いるんだ。


「喜んでほしいの?キャー社長なのー!?」


心に微かに走った痛みを振り払おうと、あたしは声を高くして安っぽいうれないホステスの子たちの猿真似をした。


「ハハ。ミリは変わり者だな。こんなすごい肩書きを言ってもミリの気は引けないんだなあ。」


また心にもないことを。わかっていてもその言葉に笑みを漏らさずにはいられなかった。


でもねユキ、それ勘違い。それならもうとっくにあなたに引かれてます。別に社長じゃなくたって彼自身が魅力的すぎるくらい魅力的だ。


「ユキが社長。ピンとこないなぁ。あたしとしては俺実は吸血鬼なんだ、とか言われた方が納得いくけどな。」


「ハハハハハ。なんだよそれー。…うん。でも社長なんて柄じゃないでしょ俺。統率力なんてないしねー。」


彼の顔が不意に寂しそうに見えたのは気のせい?

「親父は俺のことなんにもわかってないんだよ。だから俺なんかに会社一つ渡しちゃうんだ。忙しい人だから、会えるのも年に何回か。俺にとってはおじさんって感じだしなあ。」


やっぱり勘違いなんかじゃない。カーテンの隙間から漏れる月明かりに照らされたユキは本当に寂しそうに笑った。