ジュエリーボックスの中のあたし

「ミリ明日仕事なの?」

ベッドに入りながらユキはあたしに尋ねる。


そうだよと答えると彼はあしたは手料理食べらんないんだと残念そうな声を出した。


歯磨きを終えてリビングに戻り、続けてあたしもベッドに向かう。


ユキの右手が布団を広げてあたしを招く。


中に入ると左手はもうすでに腕枕として用意されていた。


素直にストンと頭を下ろすと、いつものように抱き枕にされた。


真っ暗な静寂。


「……ミリはなんでお母さんいないの?」


いつもベッドで会話なんてしないユキが突然口を開いた。


「あぁ。両親に捨てられたから。5歳のときに。」


「…そっか。ごめん。嫌なこと思い出させちゃったね。」


そう言って彼はあたしの髪を撫でた。


「ううん。そんな事ないよ。ユキはなんで母親いないの?」


「俺を生んですぐ死んじゃったから。」


「そっか。お父さんは?」


「アメリカに住んでる。宝石ブランドの社長で日本支社は俺が任されてる。」


じゃあユキって社長なんだ。


それほど驚いた訳ではない。高級クラブと呼ばれる店でホステスをしていれば若手社長や見た目からは想像出来ないお偉い様にゴロゴロ出会う。


「似合わないね。社長なんて。」