ジュエリーボックスの中のあたし

「すっげえおいしい!!ほんとにうまい!」


そう言ってあっという間に平らげ、おかわりと叫ぶユキ。


「ほんとにおいしい。これからはずっとミリに作ってもらおうかな。」


「無理にきまってんでしょ。今日はたまたまあたし休みなんだから。」


言葉とは裏腹に本当は嬉しかった。


「そうだよなあ。」


あからさまに残念そうな彼を見ていたら本当に毎晩つくってあげたくなってしまう。


「こういうのをお袋の味っていうんだろーなー。」


何の気なしに言ったユキの言葉にあたしは引っかかりを感じた。


「お母さんいないの?」

「うん。」


そんな事はなんてことないとでも言うようにユキはパクパク食べ続ける。

「ミリのお母さんはどんな人?きっとすごい美人なんだろうな。」


「わかんない。あたしもいないから。これがお袋の味かどうかもわかんないよ。」


あたしは二ヤッて笑ったけども、ユキは労るような目をしていた。


自分に母親がいない事よりも、まるであたしに母親がいないことの方がもっとつらいとでもいうように。


「変なこと言ってごめんな。」


胸が苦しくなるような彼の切ない目。それはまるで彫刻のようだった。


「なにが?あなたもいないなら同じじゃない。だいたいちっちゃい時からいなかったんだから別に今更なんとも思わないよ。」


「そっか。」


そう言うとユキは少し元気を取り戻したようでまたおかずに箸を走らせ始めた。