ジュエリーボックスの中のあたし

帰ってきてからも一苦労だった。


座っててというあたしの助言も聞かず一緒にキッチンに立ったユキは手伝うと言って聞かなかった。

しかしユキは野菜を切れないばかりか自分の指を切り落としてしまうところだったし、ガスに火がつく事に感動したりした。


このキッチンは本当に一度も使われなかったんだというあたしの予想は確信に変わった。


結局ユキはキッチンをウロウロしただけであたしが全部作るはめになった。


唯一手伝ったといえる彼の行為は箸を二人分テーブルに並べたこと。


それでも完成したご飯をテーブルに並べ終えた時、ユキが物凄く喜んでくれたことが、あたしも苦労して作った甲斐があったものだと思わせてくれた。