ジュエリーボックスの中のあたし

「すっげぇ。これ全部ミリがつくったの!?」


「あんた記憶喪失ごっこでもしてんの?ずっと横でつくってるとこ見てたじゃない。」


買い物も無事終えて、料理も無事作り終えた。


何しろこの一連の作業はほんとに一苦労だった。

スーパーに感動した彼は子供のようにはしゃぎながら、野菜やら肉やらをかごにぽんぽんつめこむは、レジの機会に物凄い関心を示すは、ほんとにてんやわんやだった。


なにしろこのお顔立ち。それだけでも目立つのにこのはしゃぎよう。ほんとに女性たちは彼に釘付けだった。


ちょっと目を離すといなくなっては、また新たな食材を入れ込んだ。


1回の食材で五万も使ったのは生まれて初めてだった。普段の十倍。


持って帰るのもまた大変。あのキッチンには何もない。鍋もフライパンもお皿も箸も。それらも調達しなければならなかった。


二人でどっさりと袋をひっさげ、ずるずる歩く。

買い物の帰り道がこんなに大変とは思わなかったと何度もつぶやくユキ。


アホ。普通はもっと楽だよと少なくとも5回は突っ込んだ。


おかげで寒いはずの道のりは汗まみれの道のりに変わった。