ジュエリーボックスの中のあたし

「リ。……ミリ?ミリ!?」


「ご、ごめん。」


「どうしたんだよ?急に。様子変だよ。」


「なんでもない。…ユキ、これからはあったかくして。」


「ミリ今初めて俺のこと名前で呼んでくれた!」

違うところに関心を持った彼は嬉しそうにあたしを見た。だけどあたしはその言葉を無視した。


必死だった。必死に訴え続けた。


「ね?お願いだからこれからはちゃんと暖かくして?」


「…うん?なんで?」


「見てるこっちが寒くなるから!」


嘘。咄嗟にでた嘘。


「あぁ。そうか。ミリは寒がりだもんなぁ。うん。わかったよ。」


なぜか納得する彼。


それからあたしたちは無言で歩き続けた。





あたしは変だ。変になってしまった。


何故彼がいなくなるのを嫌だと思うの?誘拐されて意味もわからず一緒に住んでいるのよ私。


それでもあたしは、彼から離れようと思えばそうする事はいつだって出来る。


離れないのはあたしの意志。あたしが側にいることを望んでいる。


自分の世界から消えたら寂しいと思っているのは………あたしの方なんだ。