ジュエリーボックスの中のあたし

「いてて。苦しい、窒息死しちゃうよ。」


「あっごめん。」


「急にどうした?」


彼は、あたしのマフラーをはずす事なく、巻きなおしながら聞いた。


「………。」


嫌だった。本当に嫌だった。パニックに陥るくらい。


…透き通るだなんて。


ユキが言うと冗談では済ませなかった。



本当にに透き通っていって、そのうち本当に消えてしまうんじゃないか。そんな風に思えてしまう。


それくらい彼はあたしにとって、美しくそして不確かな存在だった。


しばらくいっしょに暮らしていても、朝目覚めたら急に跡形もなく消えているんじゃないか?


そんな不安が心にはいつもあった。


彼が消えてしまったら、もう後には何も残らない。


あの部屋に彼の痕跡を示すものは何もない。1人ポツンとたたずむ私ひとり……


それを思い身震いする夜がある。


そしてその"不安"を他の誰でもない張本人、彼の口から聞かされた。


寒いと透き通るだなんて。