ジュエリーボックスの中のあたし

「ミリなに作るの?」



いっしょに外を歩く彼の声はあきらかにはしゃいでいた。



「和食にしようかな。あんたと暮らし初めてからコッテリしたものばっかりなんだもん。」



「わーすげー嬉しい。ミリの手作り。」



本当に嬉しそうな彼を見ていたらなんだか温かい気持ちになった。



心とは反対に今夜はいっそう冷える。冷たい風が容赦なくあたしとユキの肌を刺す。



寒いのが苦手なあたしはまだ早いのにコートマフラーとしっかり着込んできたのに対しユキの格好はあきらかに薄着だった。



部屋で着ていた半袖のTシャツにパーカーを羽織っただけ。見ているこっちが寒くなる。



「寒くないの?」


「寒いよ。」


「だったらもっとちゃんと着込んでくればいいのよ。」


「いや、これでいんだ。」


「どうして?」


「寒い日に肌をさらすとなんか透き通って行くような気分になるから。」


そう言った彼の目はここじゃない、どこか遠く、誰も知らない世界を見据えているように見えた。


咄嗟に言いようのない不安があたしを襲った。


「いや!ちゃんとあったかくしてよ!」



あたしはパニック気味に自分のマフラーを剥ぎ取り、彼に強引に巻きつけた。