「うん。すごいキレいだろこの子、それにすごいいい匂いがするんだ。」


そう言って彼はまたあたしの耳をクンクンし始めた。



放心状態ってまさにこのことをいうんでしょうね。



あたしは子犬かなにか?


「作用でございますか。それでは2人分のお食事をご用意させていただきますね。」



長髪男はくるりとあたしたちに背をむけ扉に向かって歩きはじめた。



「ちょっとまってよ。」


咄嗟に呼び止めてしまった。



ユキのクンクンが止まる。



あたしの助けてほしいという表情に気づいてか気づかなかいでか、長髪男は口を開いた。



「私にはどうしようもありませんよ。それにユキ様は女性に手荒な真似をするような方ではありません。ご安心を。」



まったく助けにならない言葉を残して彼は去っていった。