「はな、して、よ!」



「あぁ、ごめんね?」



「ハァハァ、ハァ」



思いっきり睨んでやってるのにまったく動じない彼にますます腹が立った。



「あなた何なの!?あたしを誘拐したあげくあたしから客までとるなんて!まったく何様のつもりなのよ!!!」



言い返すでもなく怒るでもなくただ黙ってあたしを見る彼。



その青い目に見つめられると怒っていたことさえ忘れてしまいそうになる。



あたしはすきだらけなのかなんなのか、またまたあたしは彼に引き寄せられてしまった。



ふわりと彼の香りと温もりにつつまれる。



「他の男のところに渡すのがいやだったんだよ。」



耳元で囁かれ体の力が一気に抜ける。






「ユキ様」



突然の声にあたしは顔ビクリとした。


男が1人。ドアの前に立っていた。


この男は物音も立てずに入ってきたのか。はたまたあたしがこの状況にいっぱいいっぱいで気づかなかっただけなのか。


男は赤い髪に長髪。それを後ろにゆらりとたばねている。


そして今あたしを抱きしめている彼は本当に何か様だった。



いきなり部屋に入ってきた長髪男は、あたしを見つめている世にも美しい男をユキ様と呼んだ。



混乱しているあたしをよそに話は進められていく。



「朝食はいつも通りでよろしいですね。」



「今日の夕方からの会議ですが……



一通り今日の予定を早口に話した後、やっと彼はあたしに目を向けた。



「私はお邪魔のようで。」



「気づくのが遅いけどね。」



ユキ?は朗らかにいった。



「ユキ様、また新しい女性を連れ込んだのですね。今度のお方はたいそうな美人さんですね。」