ベッドに引きづりこまれたあたしはまるで彼の抱き枕状態。



あたしの頭にキスするように唇を落とす彼。そしてまたクンクンと匂いをかぎ始める。



まるで子犬のようだった。



「あたしをなんでここに連れてきたの?」



落ち着きを取り戻してもう一度尋ねた。



「だから、キレイだから。」



「そんな物みたいに言わないでよ。人をそんな理由で持って帰ってきたら誘拐になるのよ!犯罪よ!」



この男の前で落ち着きを持続させるなんて不可能だ。



「みさとうるさい。」



もうすでに半分眠りにおちている彼。めんどくさそうにくぐもった声でつぶやいた。






……これは夢。そうだ夢に違いない。こんなに堂々とした、なんの悪びれもない(しかも美しい)誘拐犯がいるはずがない。こんなに変わった人間を見たことがない。



それにこんな変人の腕の中で妙な安心感を感じているあたしもおかしい。こんなのはあたしじゃない。



これは夢よ。一風変わった夢をみてるのよ。



朝になったら元通りのあたしの部屋であたしは目を覚ますはず。



そう思ったら、こんなにキレイな男性に出会えるのも夢から覚めるまでなんだからこの状況に身をゆだねるのも悪くないな、なんて思えてあたしも寄り添ったまま目を閉じた。