ジュエリーボックスの中のあたし

知らない男に連れ込まれたというのに、あたしの気持ちはやけに落ち着いていた。



不思議と怖くはなかった。今のこの状況よりも彼自身の美しさの方がもっとゾッとする。



とりあえずは何か飲みたい。あたしは冷蔵庫に手をかけた。



中はミネラルウォーターがぎっしり詰まっていて、隅の方に赤ワインがぽつんとある。



これまた生活感がない。


勝手にあたしを誘拐したのだから水を勝手にいただくくらい許されるでしょ。



あたしはミネラルウォーターを一気に喉に流し込んだ。



身体の隅々に水分が行き届く気がした。



なにしろビックリするほど喉が渇いていた。



「俺にもちょうだい。」