ジュエリーボックスの中のあたし

冷たい風が頬をさす。あたしはひたすら料亭の温かいお茶をおもった。



寒さを忘れるように、彼の目を忘れるように……


「みさとちゃん!」



アフターに付き合う予定のお客さんのに呼ばれて振り向こうてした瞬間だった。



2度目の正直。あたしはまた誰かに引っ張りこまれた。



今度は口を塞がれている。



口を塞いでいるのが誰だか確かめるまでもない。


さっきと同じあの香り…


聞こえるのはお客さんがあたしを呼ぶ声だけ…



でもその声までもが遠ざかっていく…



感じているのは彼の温かさとあの香りだけ………