ジュエリーボックスの中のあたし

「もー山岸さん。なんの冗談です?」



こんな時まで微笑みながら対処しようとするホステス精神に嫌気がさす。


「みさとー。頼むよ。な、一回だけ。な、な。一度だけでいんだから。」


この場合の一度だけというのは、ご飯を食べるという事だけではなさそう。それくらいは察しがつく。



「みさとー、一回だけだから。」



そう言いながらもぐいぐいあたしをタクシーに引きづりこむ。



あたしももう笑顔を取り繕っている場合ではなくなった。



必死にドアにしがみつきながら抵抗する。



山岸は我を忘れたかのような顔で体ごとむりやりひっぱりこんでくる。



もうダメだ。手の力ももたない。引きづりこまれる。



そう思った瞬間だった。


グイッ



あたしが引きづりこまれたのは山岸の車の中ではなかった。



「嫌がる女の子を無理やりつれこむのはよくないなぁ。」



気がつくとあたしは男の人の腕の中にいた。



顔をあげるとあの青い目と目が合った。