「みり、頬に血が付いてる。」



ゆきはそう言うとそっとあたしの頬を舐めた。



「フフ。やっぱり吸血鬼ね。」



そう言ってゆきの顔を見た瞬間に言葉を失った。


ゆきが今までにないほどにまっすぐな力強い目であたしを見つめたから。


もう茶化す言葉も自分を色っぽくみせる術も何も見つからない。



ただこのどうにも色めいたゆきから金縛りのように目が離せない。



「……足りない。橘の血じゃ足りない。もっとみりの血を俺にちょうだい。」



そう言って彼はあたしの首すじに唇を落とした。


ビクっ



ゆきはあたしの体の反応を見逃すことなく、すかさず今度は舌を這わせた。



「あっ。んっ。」



あたしの口から小さな声が漏れた。ゆきが今あたしに触れている部分のすべてが熱い。



「…みり、みり」



ゆきはあたしの名前を呼びながら、首筋、うなじ鎖骨へと次々に唇を落とした。



「あっあっ。ゆき、ゆき。」



突然おもむろに顔をあげたゆきは、またあのまっすぐな目であたしを見据えた。



見つめ合うあたしとゆき。



それはほんの一瞬だったかもしれないし、数分かもしれないし、もしかしたら数時間なのかも。



もう時間の感覚さえもわからない。



ゆっくりとゆきが唇をあたしの唇に近づけてきた。



自然に目が閉じていく…


…ゆきを全身で感じ取りたい。