ホテルを出た時には陽が高く、澄みきった青空が目に飛び込んできた。
昨日、降った雪は積もることなく溶けて道路を濡らしていた。
「穂乃ちゃん?」
助手席の窓から外を見ていた穂乃ちゃんがこっちを見た。
「お家の人、心配してるんじゃない?連絡したら?」
「…………」
あっ……また……。
穂乃ちゃんの顔が一瞬、強張った。
前に俺の部屋で見せた表情。
「い、いい……」
穂乃ちゃんは、首を左右に振った。
「どうして?前に親が心配性だって言ってたよね?」
「…………」
穂乃ちゃんは俯いて、ミニスカートの裾をギュッと握りしめた。
前に親が心配性だって言ってたのに……。
昨日は、帰りたくないと泣きながら言ってた。
どうして?
穂乃ちゃんと家族との間に何かあるのか?
穂乃ちゃんが心の中に抱えてるもの……。
それは一体、何なんだ?