「咲哉さん……今日はありがとう」
帰りの車の中で、穂乃ちゃんがニッコリ微笑みながらそう言った。
「いや……。でも、ビックリさせてゴメンな……」
俺は穂乃ちゃんの手をギュッと握った。
「ううん。最初はビックリしたけど、でも凄く嬉しかったよ」
「そっか。良かった」
「うん……」
穂乃ちゃんは左手の薬指を嬉しそうに見ていた。
「どうした?」
俺は穂乃ちゃんにワザとそう聞いてみた。
「ん?結婚指輪を見てたの」
穂乃ちゃんがフフと笑った。
俺はニッコリ微笑み、穂乃ちゃんの頭を優しく撫でた。
穂乃ちゃんは握られていた右手を離すと、俺の左手の薬指にはめられた結婚指輪を触ってきた。
「咲哉さん……。指輪、外さないでね」
「うん……」
俺はそう返事をした。
穂乃ちゃんは良かったと言って微笑んだ。
外さないよ。
ずっと着けてるからね。
俺の指輪を触り続ける穂乃ちゃんの右手を再びギュッと握った。