額に、冷たい手があてられた。


「熱が、あるな」


聞きなれた、声。

ああ、夢だったのか。


「たいしたこたぁ、ない」


八郎は、目を開けて、心配そうに見降ろしている幼馴染の小太郎を見上げた。
起き上がろうとした八郎を、小太郎が押しとどめる。


「おまえは、いつも無理をする。今くらいは、身体を休めておけ。その腕を斬られてから、まだ4月しか経っていないんだぞ」
「ばかにすんな。おいら、毎日尺先生の講義で、身体が鈍るほど休んでら」


八郎は笑って、手をつかずに体を起こした。
そうして、左手を見る。

肘の下から失った、左手。