「部長、やっと普通に戻ったで」


亜子が、腹筋中に私の耳元で言った。


私は、体育館入口にいる部長に視線を移した。



「ほんまや」



大雅といろいろあった時期の部長は化粧が濃くて、嫌やった。


今日は、昔の部長に戻ったみたいに普通やった。




「よっぽどショックやったんかな」


「そりゃ、そやろ。あの美貌で失恋とかありえへんやろ」


「大雅って台風みたいなヤツやな」




私は友達の会話を聞きながら、溢れそうな涙を拭う。


大雅は、部長にもちょっかい出すのをやめて、部長はかなり落ち込んで大変やったらしい。



「大雅って、杏奈に近付くために、部長に手ぇ出しとったんかな」


彩加はそう言った後に、私の寂しげな表情に気付いたように私の肩に手を乗せた。




突然私の目の前から消えた大雅。





みんなは、これで平穏が戻ってくると喜んでくれた。





私も、口では喜んでるように言ってたけど、実際は……人生で初めてってくらいショックやった。



会いたい。


声が聞きたい。


触りたい。


触って欲しい。



嫌がらせして……

大雅。




もうあんたのおらん生活なんか考えられへんねん。