あれから1ヶ月。


記憶喪失にでもなったかと思うくらいに、アイツは私を無視し続けてる。


一回も話してへんし、目が合ってもサラっとそらす。


なんなん!!


しかも、あれから全然雨降らへん。梅雨時期やっていうのに。


だから、アイツがあの傘をどうしたんかもわからへん。




お母さんは怒っとったなぁ。

お気に入りの傘を私が失くしたって言ったから。


あの傘は、商店街でも1番人気の傘で、もう売り切れてるらしい。



「杏奈!!ちょっと、やばいことなってんで」


亜子が私を練習の輪から引っ張り出した。


亜子の視線の先には、部長がいた。


バレー部の部長は、成績優秀で美人。


厳しさの中にも優しさがあり、部員から信頼されていた。




「アイツ……部長のこと見てへん?」



亜子が言う通り、大雅は…… 私達バレー部員の憧れの的である部長をじっと見つめていた。