茂みが大きく揺れ動き割れる。
その中から飛び出して来たのは人、いや子供ぐらいの背丈をした――半透明のゼリーのような奴だった。
ヒューマノイドスライム。
どうやらこいつの狙いは子供だったようだ。
けど、まだ半透明という事はオリジナルは殺されていない。
型だけを手に入れているに留まっていた。
「どうやらこいつの狙った子供は無事みたいだな」
「はい……」
「オリジナルを殺される前に殲滅する」
レイナは頷き、短刀――ダガーを構える。
俺も右手はいつでも抜けるように剣の柄を握ったままだ。
一定の距離のまま俺達はそのまま停滞する。
それを真似たのか、敵も停滞したまま動かない。
チャンスだ……!
俺はレイナに向かって頷く。
「え……あ、はい!」
……一瞬だけど迷わなかったか?
だがレイナの行動は早かった。
理解した途端、一気に間合いを詰める。
そして一線。
ダガーは孤を描き、銀の刃が陽光に煌めく。
一撃必殺。
あの素早さに対応出来る奴はいない。
レイナのダガーはそれだけ早いのだ。
俺は何度もそれを見てきたから、終わったと確信していた。
しかし――
「……え……?」
完璧に捉えていたレイナの刃。
振り抜かれた刃だったが、そこに敵の姿はない。
空を切る刃にレイナも呆気に捕われていた。
「そんな馬鹿な!」
あの一瞬で消えた!?
有り得ない!
なら……敵は……
「油断しないで!気配は……まだあります」
レイナから叱責を喰らい、俺は左右に視線を移す。
確かに気配はある……。
しかし姿が見えない。


