病院からの電話は嫌いだ。

辛い記憶を呼び起こすから。

千夏に電話を切られた後、床に受話器を転がしたままにその場に座り込んでいた京平だが、
突然の着信に身を震わせた。

<−−病院ですが、>

聞き覚えのない病院名に京平は言葉を無くした。

嫌な不安が脳裏に過ぎる。

考えるのは千夏のことだけだった。

<−−千夏さんが、重体で運び込まれました>

看護師の女性の緊迫した声に目の前が真っ暗になる。

どうしよう。

俺のせいだ…

京平が千夏の兄であることを確認した看護師は千夏の状況を手早く簡潔に説明してゆく。

<−−町の崖の下で>

<パトロール中の男性が発見して>

<発見が遅れていれば…>

<多分飛び降りたのではないかと思われ−−>

看護師の言葉一つ一つが信じられなかった。
京平は口を押さえてただ、耳から入ってくる情報を受け入れることしかできなかった。