「あ……」

「この辺に何か用事?」

「えっ? あ、あぁ……友達と待ち合わせ」

なぜか嘘をついた。

「ふ~ん。そんじゃ」

裕也は興味ゼロのリアクションをして軽く手をあげ歩いていった。

「ねぇ!」

愛子の呼びかけに無表情で振り向く。

呼び止めたものの何を言っていいかわからず、

「お姉ちゃんって言い方やめてよ!」

「だって、お姉ちゃんでしょ? オバサンじゃないでしょ?」

「はぁ……」

素直に納得したが、相変わらずからかわれていると思うと半ば呆れてしまった。

「じゃあね。お姉ちゃん」

裕也は“お姉ちゃん”の部分を強調し、腹の立つ笑みを浮かべ踵を返した。背を向けたまま軽く右手をあげ、バイバイをしている。



またしても裕也のペースに乗せられた自分に腹立つし情けなかった。何だか頭の中が空っぽ状態で、わけがわからなくなっている。