このところ、変質者の出現で世間は騒いでいた。

霧の深い夜、突然カミソリで切りつけてくるという。

そして2・3回切りつけた後、笑いながらその場を後にする。

警察は捜索していたが、それでも犯人は見つからず、人々はおびえていた。

新聞では新たな被害者が出たと書かれていた。

けれどもう―次は出ない。

「やれやれ…。早く霧がはれないかなぁ」

霧に息を吐きかけながら、あたしはマンションに向かって歩いた。