外は寒い。 車に乗った後も、ユキの手は、かじかんで震えていた。 胸が痛む。 温めてやりたい、と思ってしまったのは 俺の目が、ユキの肩越しに別の人を重ねたせい。 「隆志でいいよ。」 さっきフルネームで呼ばれたことを思い出し、そう言った俺に ずっと窓の外を見ていたユキは こちらを向いて 「了解ー」 と、品良く整った顔を歪めて笑った。 …あぁ 気怠そうに語尾を伸ばす癖が よく似ている… そんなことを考えながら 車を走らせた。