先ほどのユキとの会話を思い返す。




"言い訳とかしないの?"




"しない"




言い訳をしなかったのは


それが自分にとって楽な道だったからかもしれない。



"騙している"

という事実を
これ以上、背負う事が怖かった。



全てを明かせば

楽になれると

俺はどこかで思っていた。




ユキの心を

壊すことだとも考えずに。





「…そうかもしれないな。俺はいつも自分が大事で

なんの罪もないユキを巻き込んで…

何やってんだろうな…」





浩介は

いつもユキの気持ちを

一番に考えている…


こいつには敵わない。



電話越しに伝わる怒りから


そう気づく。





「……やっぱ無理だ。お前にアイツは重すぎるし

アイツにもお前は重すぎる。

…悪いけど、お前にユキを幸せにできるとは思えねぇ。」







その後に浩介が

言い放った言葉は


俺が何よりも恐れていたものだった。










「ユキは俺がもらう。」





手を退け、と。