キッチンから 聞こえる鼻歌。 『この曲……』 女性ヴォーカルが歌う 甘く切ないメロディー。 アタシは、 隆志には似合わない そのメロディーに 耳を傾ける。 そういえば 昔、親友が…… マヤが……… よく口ずさんでいた。 <<ただ出逢えた事を ただ愛した事を 二度と逢えなくても 忘れない―‥>> アタシはそっと目を閉じた。 独りの夜も あの狭い部屋の片隅で ちゃんと眠れるように。 子守歌を 耳に焼き付けるように。