……南さんって誰だっけ?

親戚や友達の顔を思い浮かべたけれど、私にはそんな名前の知り合いはいない。

というか、私がここに居ること自体、あまり知られていないはずなのに。

なんで“南さん”は知っているのだろう?


誰が電話してきたのかわからないままでは気味が悪いので、どんな感じの人だったのか看護師さんに尋ねようとしたとき。

それが一成の名字だったと思い出した。


普段は名字で呼ぶことなんてないから、すっかり忘れていた。

忘れていたことがばれたら、一成に呆れられそうだな。


「わかりました。ありがとうございます」

呆れる一成の顔を想像しながらそう言うと、看護師さんはにこりと笑ってナースステーションの奧へと入っていった。

私はその背中を見送ってからもう一度、師長さんに頭を下げて。

ナースステーションの前にある、正面玄関前へと下りられるエレベーターに乗り込んだ。