スケベの季節(仮)



(……さり気なく……。そう、あくまでさり気なくだ!!)


意を決した桐野はセーフティーポイントを出て、彼女たちの横からアプローチをかけるべくジリジリと近付いていく。


音を立てないように腹についた土とコケを払い、軽く咳払いをして喉の調子を整えた。


「そんでさぁ、アレって濡れてないとチョー痛いんだよね〜〜!」


(……違う、これはあくまで、あくまで指導なのだっ!邪な気持ちなどミジンも無いっ!!)


最後の砦であった聖職者としての良心も自己正当化の前には陥落を余儀なくされ、もはや、彼と哀れな獲物を阻むものは、たった5mの空間だけとなった。


(…………いざっ!!)


ターゲットへと忍び足で近付く桐野。


一歩、


二歩…、


三歩……、


四歩………、


五…


「……けどさぁ、コンタクトってメガネかけてるよりお金かかるって聞いたけど、実際どうなの?」


「かかるわよ〜!私ソフトの2ウィークだからさ〜、2か月分で7500円。」


「うわ〜、結構するんだ〜」


(………………………………?)


すでに煩悩のみに支配されていた桐野の頭に、ある一語が響き渡った…。


(………コン…………タク………………ト……………………?)


彼の思考世界は、今まで「情欲」という灼熱の太陽によってカラカラに干からび、乾燥しきっていたが、その大地に「理解」という名の雨が音も無く降りはじめた……。


やがてその雨脚は勢いを増し、ついには「後悔」という名の洪水となって、彼の頭を濁流が駆け巡る……!




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