「ねえ、ダイエットはどうしたの」



揚げたてのコロッケを歩きながら頬ばる彼女に、ぼくは言う



一瞬本気でビックリした顔になって、彼女は言う



「それはそれ、これはこれよ」



会話はこれで終了したと言わんばかりに平然として、彼女は二個目のコロッケにとりかかる



(それはそれ、これはこれ)



ぼくはこころの中でその呪文をくりかえす



くりかえして唱えれば、意味がわかる



はずもなかった



女性にとっては、これで完了なのだろう



そういう世界認知



ぼくには理解不能だが



どうしようもなく、愛しくなる



「それはそれ、これはこれ」



ぼくは笑った



これがぼくの、きみへの世界認知