「急に何?」


母さんは部屋に入ると、勝手に俺のベッドに腰掛けた。  


「亜紀ちゃん、すごく綺麗になったわね。陸がずっと想い続けているだけあるわ」


何だよ……冷やかしか? 

「それだけなら戻るけど?」


俺が部屋のドアノブに触れた時、 


「待って!」


母さんが俺を引き止め、ゆっくりと話し始めた。

 

「実はね、お母さん陸に話さなくちゃいけないことがあるの」


「話?」


母さんは小さく頷き一度間を置くと再び口を開いた。

「あのね、お父さんが海外に転勤になっちゃったの」

「……転勤?」


「えぇ。前から決まってたんだけど陸にはなかなか言いだせなくて」


「そっか」


今だって一人で生活してるし、両親が海外に転勤しても対して変わらない。


「それでね、お母さん達陸にも来てほしいと思ってるの」


母さんの発した一言に俺は言葉を失った。