「福原とはうまくやってる?」


亜紀が座っているソファーの隣に腰を下ろし問い掛ける。 


「うん……」


“あんまりうまくいってない”


本当はそう言って欲しかった。 


「そっか。こないだはゴメン。俺、亜紀の気持ち考えずにあんな事……」


台所でお湯を沸かしている母さんに聞こえないよう、声のトーンを抑える。 


「ううん。あたしがはっきりしなかったのも悪いから……ごめんね?」


「亜紀は悪くないって」


俺は恐る恐る亜紀の頭に手を乗せた。 


少し驚いていたが、嫌がる様子のない亜紀の頭を俺は優しく撫でた。


“彼氏”という立場でこんなことができたらめちゃくちゃ幸せなのにな。


そう思うと胸がチクリと痛んだ。