「……お前もリレーでんの?」


「あぁ」



もうすぐレースが始まるというのに、福原は緊張する様子もなく涼しげな表情で俺に話し掛けた。 



「へぇ。つーか俺アンカーらしいんだけど」


“らしい”ってなんだよ。 


「俺もアンカー」


こいつがアンカーを引き受けるなんて意外だ。


“アンカーなんてやらない”


とか言いそうなのに。


それ以前に福原が体育祭に出ることが奇跡か。


福原の性格上絶対にこういったイベント事は好きではないだろうし。



すると考え込んでいる俺に、



「お前もアンカーなの?じゃあ遊んでられねぇな。俺、お前に絶対負けないから」


福原は真顔でそう言い放った。 



「望むところだよ」


俺の言葉を聞き終えると、福原は“バーカ。俺に勝てるわけねぇだろ”そう言ってクスッと笑った。




福原には絶対に勝ちたい。 


クラスの総合優勝なんてもうどうでもいい。 


亜紀……見てろよ? 


俺、絶対福原に勝つから…… 


俺は気合いを入れるとギュッと拳を握りしめ、亜紀のいる観客席を見つめた……