「亜紀!一生くんのレース始まったよ!」


「え……?もう始まったの?」


一生の出番が一番初めだとは知らなかった。


愛はボケッとしていたあたしの肩を大きく前後に揺らした。 



「……どうしたんだろ?」 


ヤル気なさそうに紙を見た一生は、その紙を見ると立ち止まって何かを考えていた。 


そしてパッと顔を上げるとこっちに向かって走りだした。
 


物凄い勢いで近付いてくる一生。


「……ーー亜紀!走るぞ!」


「ぇえ?!」


瞬く間に観客席に到着した一生は驚くあたしに構うことなく、あたしの手を引っ張り走りだす。 



「キャー!」


「一生くん!!頑張って!!!」


そんな一生を見て女子生徒からは悲鳴に似た黄色い歓声が響く。