「市橋くん、何やってたの!早く席につきなさい」


「すいません」



教室に入るとすでに午後の授業が始まっていた。


数学の女教師に説教された俺は軽く頭を下げると自分の席に向かった。



「……ねぇ、陸くんどこ行ってたのぉ?」


「あぁ、チョットね」


隣の女が興味津々といった表情で俺に問い掛ける。


鼻につく香水の匂いが不快だ。



「……ねぇ、今度一緒に遊ばない?」



女の誘いには慣れっこだ。


「ごめん、最近忙しくて。暇ができたらね?」


どんなに誘われても俺には亜紀しか見えないから。


「えぇ……残念~!じゃあ今度遊ぼうねぇ?」


隣の席の女はつまらなそうに唇を尖らせながらも上目遣いで俺を見つめた。