私は壇上に立った。


自分を変えるチャンスを与えてくれたその人へ報いるため。

そしてなにより
――自分らしくあるために。


私はここに立った。


声はマイクを通じて体育館に響きわたり、それがありったけの主張となる。

あの頃、持てなかったものが今ここにはある。





高揚感を残しつつ自分をさらけ出した後、私は降壇した。



そして、入れ違いで 彼が マイクの前へ立った。




腕に抱えるほどの茶色の紙袋。
そのフォルムは丸い。





彼はそれをマイクの横に据えた。

どん、と音を立て置かれた拍子にマイクがハウリングした。次いで、それを覆っていた包みが剥がされる。

紙の擦れ合う音が途切れないうちに、場内は騒めいた。

皆の目線の先にあったものは



――達磨(ダルマ)だった。 



つるりとした朱色の頭、どこか愛敬のある顔が憎めない。

気が付けばその両の眼はすでに黒々と塗られている。



その意味に気が付いた者がいたのだろう。
会場はさらに湧いた。
ざわめきの中、彼はゆっくりと口を開く。



「もう、両目入れたんで、会長やらせてください」



そう言って彼は誇らしく、




笑った。






それが幕開けとなった。





五つの光が宴をはじめる―――