「…ところで先生。

 もう結婚はしたの?

 まさか、まだ独身とか…?」



そ…そうきたか…。



「はい…そのまさかです…。」



「そうなんだあ。

 で、彼女とかはいないの?」


「……彼女みたいな人なら…。」


まだハッキリ《彼女》と
言えないところが辛い…。


「もう!しょうがないなぁ。

 相変わらず手のかかる
 教師だねぇ。

 いい加減、身固めなさいよぉ。

 真奈も奈央も他のみんなも

 先生の幸せ報告待ってんだよ」



生意気な口をきくようになったもんだと、苦笑しながら聞いていた。



「もう!情けない顔しないでよ。

 あたしね…ちょっと先生に
 憧れてたんだよ。

 マサト君なんてさ、

 木下先生みたいな教師になるん
 だ!って

 今、受験勉強頑張ってるし。

 だから…先生も頑張ってよ!」



利穂を励ましに行ったつもりが、
逆に俺が励まされてしまった…。


情けねえ…。



でも…なんか俺…

教師やっててよかった…。