鬱々した気持ちのまま数日を過ごす。
栞とはまだ何となくギクシャクしたまま。
仕事から帰ってもなかなか話し掛ける切っ掛けを掴めず、無言でテレビを見ている。
暇つぶしに買ってきたらしい中古車情報誌を見ていた栞が、ふと俺に話し掛けてきた。
「ねえねえ、これ見て。
このハチロク。
あたしが乗ってたのと仕様が
殆どおんなじだよ♪」
なぜだかその言葉にカチンときた俺。
栞に怒鳴ってしまった。
「そんな事言ったって、買ってやんねえからなっ!」
栞は全く意味が分からないといった表情で俺を見ている。
そりゃそうだろう。
栞だって、おねだりのつもりで
俺にそう言ったんじゃない事位、
今なら分かる。
俺の一方的な解釈。
でも、その時の俺は、栞が俺にハチロクをねだっているようにしか聞こえなかったんだ。



