行くあてもなく
車をただ走らせる。
『釣った魚に餌をやらない』
俺…ずっと前にも言われた事が
あったんだ。
――教師になりたてで、
夢も希望もてんこ盛りだった頃。
それに比例するように、
仕事も山盛りだった。
仕事の他に、新人の教師には、
通称『初任研』という研修もあって。
だから休みなんて、
あって無いようなもんだった。
遠距離恋愛になってた当時の彼女
美保の相手なんて、当然ろくにできる筈もなく。
美保が
会いに来るって言ってくれても、
忙しいから来なくていいと断った。
俺は美保に
寂しい思いさせてしまったんだ…。
たまに美保が都合をつけて
会いに来てくれても、
連れてくのはパチ屋ばっかで。
――美保が他の男と浮気した時、
俺は美保を強く責めたけど、
悲しい目をして美保は俺に言ったんだ。
『光基は
釣った魚に餌をやらないから』
って。



