栞と、 栞のほんの少しの荷物を乗せ、 俺の車は高速に入る。 ちょっとの間、 あれやこれやと喋っていた栞が、 ふと窓の外を見て黙り込んだ。 俺には何となく解っていた。 栞の視線のそのずっと先は、 今まで過ごしていた家。 娘と暮らしていた家…。 景色を眺めるふりをして 向こうを向いてるけど、 俺には解ってたんだ。 栞が 唇を噛みしめて、頑張ってた事。 歪みそうになる表情。 気を緩めると、 こぼれそうになる涙を 我慢してた事…。 もう 二度と会えないかもしれない 娘の事を 思ってたんだろ?