その年の年末

私は年明け成人式のため実家に帰ることにした。

本当は

内くんと年越しをしたかったけど

母が着物をレンタルしたから写真を撮りに帰りなさいと言ってきた。

後にこの母の作戦は成功を治める。

実家に帰ってる間、年末年始ということもあり

礼儀として内くんへの電話を控えていた。

本当は話したかったけど我慢してた。

年が明けてすぐに大学の試験が始まるので

成人式の写真だけとって少し早めに東京へ戻った。

内くんは羽田空港まで迎えにきてくれた。

その日はせっかく羽田まで来たのだからと

帰りにディズニーランドによってデートをした。

だけどそれから1週間ほど、私は試験勉強で内くんをかまってあげれなかった。

それでも・・・

その年の成人式

東京に雪が積もり交通がマヒした日

電車も動いてなくて

私はすることがなく家にいた。

夜内くんから電話があった。

「ひな、雪すごいね!」

「うん」

「会えなくてさみしい?」

「うん」

「俺どこにいると思う?」

「・・・」

「外見て!」

私はベランダから外をみた。

「!」

うちくんが笑って手を振っていた。

「どうやって来たの?」

「いつも車で通る道を歩いてきた。暗いし雪も積もって木は倒れてるし怖かったよ」
いつも車で通る道・・・

2人の家の間には山があって、バスや電車だと山をぐるっとまわって乗り換えもして1時間はかかってしまう。

その山にバスも通らない昼間でも暗い整備されていない地元の人しか通らない細い道がある。

そこを、山の中を歩いてきてくれたなんて感動した。

「それだけ会いたかったんだよ。もっとうれしそうな顔してよ!」

うれしいのに表現できない。

こんな風に体いっぱい精一杯好きだと表現してくれる内くんに

私は素直に接することができなかった。

あれこれ迷いながら

お正月に母親に説教され反対されていることもどこかで気にしていた。

たぶん・・・

内くんは私の迷いに気づいていた。