私はどうしていいか分からず、彼に つられて立ち止まり、顔を手で押えて 下を向いていた。 しばらくすると彼ははっきりとした声で 言った。 「そんなに辛いのなら、付き合う 意味がない」 私は驚いて顔を上げて、大希を見た。 彼は真顔だった。 「俺に嫁さんと息子がいるのも、結子に 旦那さんがいるのも、考えたって 仕方ない現実だ。お互い見えない世界 には干渉しないで、俺は結子を結子は 俺だけを見ていればいいじゃないか。 それじゃあ、駄目なのか?駄目なら 俺は……」