この時ばかりは夫が若い愛人宅へ 行ったきりになっている現実さえも 頭からすっかり消えた。 そして未だに自分の中に彼に対する 気持ちが、まだこんなにあったことに 気が付いて驚いた。 私はドキドキ、わくわくしながらも 『三十代も後半の中年女が、何て 馬鹿なんだろう』 と思ったりもした。 それでもその気持ちは鎮まることを知らず 私は興奮したまま、彼と仕事を共にする ことになった。