『ね、いいでしょ?』

『嫌よ』



ぼっとしていたけれど、恵のその手には乗らない。



『ちょっと!!まだ何も言ってないじゃんっ』



だから、嫌なのよ。

ここで「いいよ」なんて言って、とんでもないことを許してしまったりするから。


恵が、よく使う手。



『ごめん、もう私帰るから』



波乱の席替えから、3日。

桜の見えるこの席。


どうしても、思い出してしまう。



授業も集中出来ない。


ま、それは海斗のせいもあるけれど。



─────好き。



想いの強さを思い知る。


けれど何一つ知らない。

彼の名、しか。

だから、決めたのよ。




会う、彼に。